春さんのひとりごと
<Mさんの訪越>
いつも9月になると、日本から一週間ほどベトナムにやって来る人。それが私の知人のMさんです。Mさんは日本では、朝早くから夜遅くまで働いている、40代初めの普通のサラリーマンです。
そのMさんが初めてベトナムに来たのは今から6年前で、それから毎年このベトナムに訪れていますので、ちょうど今年で6回目になります。
この6回のベトナム訪問の間に、ベトナムのどこを訪れたのかというと、何とどこにも行かずにミニホテルのフロントの椅子に座り、そこの管理人の爺さんを相手に朝からビールを飲みながら談笑しているだけなのです。
Mさんは「このベトナムで観光で訪れた唯一の例外は、カンザーくらいのものです」と自分でも言ってましたが、そのくらいアチコチを観光で動き回るタイプの人ではありません。
ちょうどじっと熱い風呂の中で、その熱さを楽しむかのように、この暑いベトナムでもどこにも出かけずに、じっとホテルにこもっているだけです。私からすると買物などの通訳に同行する必要もなく、日本からやってくる人でこれほど手の掛らない人も珍しいくらいです。
そして夕方になると「そろそろ豪遊しに、メシでも食いに行きますか?」と誘いの電話が私と浅野さんに掛って来ます。私もその時には「行きましょう!」と、二つ返事で答えます。
実際このMさんがベトナムに来る時が、ふだんはベトナム料理ばかり食べている浅野さんや私は、一年の中でもMさんが誘ってくれるこの時が、日本料理屋や韓国料理屋に行く数少ない機会ですので、ひさしぶりに今日は違う料理を味わえるかと思うとウキウキして来ます。
そしてこの豪遊パターンが一週間ほど続いて、いつものように「それではまた来年!」と言い残して、日本に帰って行くのがMさんの訪越のパターンなのですが、彼が帰るたびにいつも「何が楽しくてこのベトナムに来ているのだろうか・・・?」と不思議に思いながらも、私から見れば奇特な人というしかありません。
ベトナムに来ても、どこにも行かずに朝からミニホテルで爺さんとバカ話しをして時間をつぶし、夕方になるとやおら腰を上げて私や浅野さんに夕食の大盤振る舞いをしてくれるという、いつも決まったように同じパターンの一週間をベトナムで過ごして日本に帰って行く人。それがMさんなのです。
Mさん、来年もまた会いましょう!
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