春さんのひとりごと
<1年で一番幸せな月>
1年の中で11月という月は、ベトナムで「先生」という職業に就いている人にとっては、大変幸せな月です。なぜならこのベトナムには11月20日に、「先生の日」という羨ましい日があるからです。
公立の小学・中学・高校・大学で教えている先生たちであれ、私立で日本語を教えている先生たちであれ、一年の中でこの日は自分たちのクラスの生徒たちから、いろんなプレゼントをもらい、生徒から先生に対して「感謝と敬愛の気持を表わす日」
として、このベトナムでは定着しています。
日本人から見ると、先生に対しての尊敬心を国全体で表わしてくれる麗しい・羨ましい風習だといえましょう。生徒たちからこういうふうに敬われるベトナムの先生は、また先生自身の向上心をも高めて行くことは間違いないでしょう。
クラス全体で、Yシャツやネクタイや花などのプレゼントを先生に進呈するそうです。もちろん生徒たちが自分のお金でそれを買うほど裕福ではないはずですから、その背後には当然それを支援してくれる親がいます。
この日の一日前から、先生に贈るための花を売る花屋さんが道路の到るところに現われます。以前ちょうどこの時期にハノイにいた時に見た花屋さんは、道路の到るところを占拠していて、そのあまりの花屋さんの多さに驚きましたが、すべてこれが「先生の日」のための花売り屋さんなのだと聞いて、またまた驚いたことがあります。
今年たまたまこの「先生の日」に、ベトナム人に日本語を教えているベトナム人の先生から、「今回の集まりには日本人がいないし、生徒も日本語を勉強したいので来てくれませんか」と請われて、ある日本語学校のクラスの「先生の日」の集まりに私も招待されました。招待してくれた生徒たちは大学生や、大学を卒業したての社会人くらいの年齢がほとんどの人たちでした。
そして夕方7時過ぎにバイクを飛ばして着いた最初の集合場所は、 何とカラオケ屋さんでした。食事もしないでいきなりカラオケ屋さんに来てどうするのだろう?と思っていたら、ここでカラオケを歌いながらついでに食事もして、「先生の日」をお祝いしてくれるという趣向でした。
集まった生徒たちは男女合わせて全員で15人ほどいて、全員日本語学習歴は3ヶ月くらいの初心者クラスでしたが、まだ習って短期間ながらも私がゆっくり・ゆっくり話す日本語を聞き取れるのには驚きました。
みんなで楽しく食事もしながら、歌も唄いました。途中日本語を教えている自分たちの先生にプレゼントを上げる場面があり、その先生は生徒たちからYシャツとネクタイをもらって、嬉しそうにお礼の言葉をみんなに述べていました。
それが終ると次には飛び入りで参加した私にまで、蘭の花を準備してくれていて、それを私にプレゼントしてくれました。そしてこの日のパーティーが終り解散になった時、すべてここの費用は彼等の招待ということでみんなで出し合って払ってくれて、先生たちには一切出させてはくれません。
「招待した側が、費用は全て持つ」というのはまた、ベトナムの宴会には良く見られる風習で、こういう場面でもそれは同じように「先生を招待したのだから、費用は生徒がみんな持って当たり前」という感じでしたが、私から見ると(みんな大して裕福でもないはずだろうに、大丈夫だろうか・・・)と心配したほどです。
家に帰る時バイクで走りながら、今ベトナム全土で昨日・今日と、生徒たちから感謝されている「先生の日」が催されていて、そこにいる先生たちはさぞ楽しい・幸せな笑顔を浮かべているのだろうな〜と思うと、ジーンと来ました。
実はここベトナムの先生の給料は、日本人からすると驚くべきほどの薄給なのですが、この日だけは「先生になってやはり良かったな・・・」と思っているのではないでしょうか。
※春さんは1997年春よりホーチミンに駐在しています。今ではすっかり現地の人となって、見分けもつかなくなっています。春さんに質問や相談があればメールをお送りください。
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