アオザイ通信
【2006年12月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

<我が子へ贈る手紙>
これは父である日本人の私が日本語で書いて、この年に4歳の誕生日を迎えたあなたに贈る手紙です。いつか将来あなたが、父が日本語で書いたこの手紙を読むだろうことを期待して。

愛する我が子・Aiちゃんへ。4歳の誕生日おめでとう!2002年の11月4日に、ベトナムであなたが生まれてから、あっという間に4年間が過ぎましたね。

この4年間あなたは大きい病気をすることもなく、大した怪我もなく、私たち両親から見ても本当に手がかからない子でした。

「子供は生まれた時から、すでにその可愛らしさで親孝行をしている」と日本では良く言いますが、小さい時からあなたを見ているとまさしくその通りだと思います。

あなたはこの4年の間その大部分はベトナムにいましたが、今まで3度お父さんの故国である日本に行ったことがありますよ。あなたが大きくなった時に、その記憶はどこまで甦るでしょうか。

1度目は、あなたがまだお母さんのお腹に宿って2週間目の時。この時の記憶はもちろんないでしょうね。この時お母さんは体調的に大変辛い日本行きの旅になりましたが、日本の両親やご先祖さまにお父さん・お母さんの結婚を報告する目的の旅でもありました。そしてその時にあなたが宿っていることを知らせることも出来て、お父さんの両親も大変喜んでくれました。

2度目の日本はあなたが1歳半の時で、東京ディズニーランドにも行きましたよ。この時はあなたもしっかりした足取りになっていて、広い園内を喜んで走り回っていました。たまたまこの時には黄色い小さいアオザイを着ていたので、観光に来ていた人たちが一緒に写真を撮らせて欲しいと人気者でしたよ。

そして3度目は3歳半の時でした。この時はどこにも行かずに、ずっと田舎にいました。しかしお父さんの田舎の家の回りには、あなたと同年齢の子供たちがいないので、あなたは家にいる2匹の犬を相手に、朝起きてから夕方になるまで泥んこになりながら遊んでいました。

そしてこの時に80歳を超えて体力も弱って来ていたおじいちゃんは、私たち3人がベトナムへ帰る前に田舎の駅で別れる時「来年もアイちゃんの顔を見たいね。おじいちゃんも頑張るからまた帰って来てね!」あなたの頭を撫でながら話しかけていたのでした。おばあちゃんはその横で、目を赤くしながらうなずいていました。

そしてこの2006年11月に、ベトナムであなたは4歳の誕生日を迎えたのでした。家では家族と親戚の人たちが集まり、あなたの4歳の誕生日を祝ってくれました。そして4歳の記念にと、家族で記念の写真を撮りに行きました。

お父さんは日本の伝統的な服である紋付を着て、お母さんとあなたも日本の着物を着て写真を撮りましたよ。今でもその写真はまだあるでしょうか。

しかし大いに楽しく迎えるべきあなたのこの4歳の誕生日に、実はある事件がきっかけで、お父さんとお母さんは深刻な、「別れる危機」寸前のところまで到ってしまったのです。

その原因と責任はすべてお父さんの側にあります。お母さんの方にはありません。大きな理由は、今までお父さんがあまりに家庭を省みなかったことに対してお母さんの不満が続いていた時に、ある事件がきっかけでそれが爆発したのでした。

それからお母さんは数日泣いていました。何日も食事をしませんでした。夜もほとんど寝ていませんでした。お母さんのこころを深く傷つけたことを後悔して、お父さんもまた同じように眠ることが出来ませんでした。そしてお父さんは心からお母さんに謝りました。

今回のことで改めて、お父さんは「家族の大切さ」を再発見したことも事実なのでした。家族こそまさしく人間世界において「至上のものである」ことを痛感しました。

そしてお父さん・お母さんがこの時そういう危ない状態になっていたことは、まだ幼いあなたにも理解出来ていたようです。それであなたは夜中に、自分のお腹の上にお父さんとお母さんの両手を持っていき、2人の手を握らせて、「アクシュシナサイ!」とベトナム語で叫んだのですよ。

また夢の中でうなされていたのか、突然「ワー」と泣き出したりして、涙を流していました。まだ幼いあなたのこころをも傷つけたことに対して、お父さんは深く反省しました。

そしてお父さんはお母さんとあなたに強く・固く約束しました。「これからお母さんにはよき夫として、Aiちゃんにはよきお父さんとして努力していく」ことを。





「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。

■ 今月のニュース <読者の意見より> ■
●ベトナム人のイメージを宣伝する重要なチャンネル
先日私は外国に留学していた妹を迎えに空港に行きました。その時に目にした光景です。出口から出てきた妹に「お帰りなさい!」の挨拶を交わす暇もなく、妹はある年配のベトナム人を指差して、「あなたはベトナム人全体の面汚しだ!」と厳しく罵倒していたのでした。

しばらくして再会した妹に事情を聞くと、あの男の人はベトナムに到着した時、入国手続きのために皆がきちんと列を作って並んでいる時にも、横から平気で割り込んで入って来たので、ある年配の欧米人の女性に胸倉をつかまれて厳しく叱られていたんです。「皆はきちんと並んでいるのに、あなたはなぜ横から割り込むのですか!ベトナム人というのはそういう人たちなのですか!」と。

異国に行けばベトナム人を良く知らないその国の人たちは、たった一人のベトナム人の立ち居振る舞いや言動やしぐさを見て、「ベトナム人というのはこういう人たちなのか」という想像を巡らせるのは当然なことなのである。だから外国に旅行したベトナム人は、祖国の重要な宣伝もしていると思い知るべきなのである。

● ビュッフェでの光景
異国を旅行する時に、各国のいろんな食事を味わうのはその楽しみの最たるものであろう。しかしこの楽しみの食事でも、ベトナム人の行動は外国人から顰蹙を買っていることがあるようである。特に正規の料金を払えば食べ放題のビュッフェでは、ベトナム人のマナーの悪さが際立っている。

ベトナム人は並べられた料理の中で、一番値段の高そうなエビやカニの料理に目ざとく目を向けて、「自分の胃袋に入る食欲の量よりは、目で見た欲望の量」に負けて、高価な種類の料理を皿に大量に盛り、結局最後は食べきれないで残してしまっているのである。
そして欧米人のお客がそこに近づいた時には、皿の上にはほとんど何も残っていない状態である。こういう振る舞いは大変恥ずかしいことと言わなければならない。

さらにはベトナム人はこういうビュッフェのような場所でも、幼い子供に無理やり食べ物を押し込んで食べさせていて、子供がそれを嫌がって大きい声で泣き叫んでいるために、朝の静かな食事を楽しもうとしている欧米人には不快なことこの上ない光景である。

● 空港待合室での光景
国際空港の待合室にはいろんな国の人たちが集まっている。その中でベトナム人の集団を見分けるのに特徴的なことがある。彼らベトナム人は待合室の椅子が空いていない時はほとんどそうだが、椅子が空いていてもそういう姿勢に慣れているためか、気持ちが良いのか、年配の男性や女性が腰を落として中腰の姿勢で談笑したり、おやつを食べていたりしていることがある。

そこが公共の場所であろうが、なかろうが、他人の目など気にすることもないこのような振る舞いは、異国においては慎むべきである。

● お寺での光景
教会やお寺という場所は、そこに通い詰める信者もいて、宗教の差はあれ、どこも敬虔な祈りを静かに捧げている人たちが多い所でもある。しかしベトナム人の観光客はこういう場所でも、辺り構わず大きな声で「おおーい○○!おおーい○○!」と、人の名前をベトナム語で叫んでいるのである。たとえ観光でこういう場所を訪問する場合でも、静かに見学すべきであるというマナーが欠落している場面を良く目にする。

● 傲慢な従業員への態度
今のベトナムで海外を旅行する階層数はまださほど多くはない。そのために海外に行けた自分自身は「お金持ちである」という錯覚に陥る者もいるらしい。そういう人は、異国でお世話になったホテルなどの従業員に対して、普通に素直に払えばいいチップを、傲慢な態度で「呉れてやる」ような与え方をすることもあるという。それで従業員は、そういう態度のお客から貰ったチップを毅然として突っ返すのである。

● 今後への提言
異国に行ったベトナム人は旅行者であれ、留学生であれ、長期滞在者であれ、ベトナム人であるあなたを通してその国の姿を映し出していることを知るべきである。
もしベトナム人が異国で、何か恥ずかしいことや悪いことをした時には、個人名で「ベトナム人の何某がこういう悪いことをした」と外国人は噂するわけではなく、「ベトナム人がこういう悪いことをした」という噂が広まるのである。

ベトナムの諺に「鍋の中に一匹でも虫が入っていれば、その鍋の中の料理すべてがダメになる」というのがある。異国ではたった一人のマナーの悪いベトナム人の評判は、ベトナム人全体のマナーの悪さの評判になってしまうという怖さを知らなければならない。

(解説)
今世界の観光地で、一番マナーが悪い観光客は「中国人」であるというのがどうやら定評のようです。私もこのベトナムで一度エレベーターの中で、中国人数人と一緒になったことがありました。彼等はあの狭い空間の中で、他人のことなど全然気にせず、とにかく大きな声で話すその無神経さにはあきれました。

列に割り込むというのもまた中国人の得意芸といいますが、ベトナム人も同じような習慣があります。切符などを買う場合でも、キチンと列に並んで自分の順番が来るまで大人しく待つということが出来ません。とにかく早いもの勝ちで、人に譲り合うような「謙嬢の美徳」を発揮していたら永遠に買うことなど出来ません。

そういう点では、ベトナムは良い意味でも悪い意味でも中国の文化や風俗・習慣の影響を強く受けています。そして近年、経済が発展して来たベトナムにも富裕層が出てきて、同じように海外旅行に出かけています。

そういう人たちが上の記事にあるような行動を取っているのでしょうが、この点では以前日本も、農協の団体さんがパックツアーで海外旅行に出かけて、ホテルのロビーを腹巻・ステテコ姿でうろつき回って外国人の顰蹙を買っていたというようなこともあったような気がします。しかしさすがに今は、そういう日本人の団体はあまり聞きせんね。

中国もベトナムもあと数十年もすれば生活水準も確実に上がり、それにつれてその国民全体の文化のレベルも上がって来て、それは国民のマナーや常識やモラルの向上に繋がってくることでしょう。


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