春さんのひとりごと
<第13回日本語スピーチコンテスト終わる>
5月半ば、今年で13回目を迎えた「ホーチミン市日本語スピーチコンテスト」が終わりました。今までは私は、このコンテストを楽しみに待ちわびている一人の観客として参加していました。
(今年はどんな人たちが、どんなテーマで、どんな日本語のスピーチ能力を披露してくれるだろうか)と期待しながら聴くのが楽しみでした。
過去聞いた中では、すばらしくスピーチの上手な人が幾人もいました。目を閉じて聞いていると、実際日本人が話しているのではないかと見まがうばかりに達者なベトナム人もいました。その人が今までどのぐらい日本語を学習して来たのかは紹介されませんでしたが、「よくぞここまで頑張って来たことだなあー」と、私は一人で感心していました。
それが今回は、このスピーチコンテストを運営する側の一人として参加させて頂くことになりました。これに参加して初めて、今まで観客として楽しませて頂いていたこのスピーチコンテストが、実はこれを運営する日本人とベトナム人のボランテイアスタッフに支えられて、いかに事前に大変な時間と労力を使い、そして周到な準備の下に進められていたのかが良く分かりました。
5月中旬に行われるこのコンテストに向けて、5ヶ月前の昨年12月から呼びかけが始まり、最初の第1回会合は1月中旬にスタートしました。
この時には20人ほどの日本語を教えている先生たちが参加していました。
この会合は最終的には全部で6回ほど開かれましたが、普段の平日は全員が授業を抱えているので、原則としてその後もずっと日曜日にこの会合は開かれました。
最初の会合で出された問題点は、昨年の運営や準備や当日の進行の記録がほとんど残っていないし、担当者も入れ替わっているので、昨年からの引継ぎが全然出来ない状態であるという嘆きでした。
しかしそこからみんなでお互いがいろんな役割分担を振り当てて、少しずつ形らしきものが出来上がったのが3月くらいだったでしょうか。さらにまたこの3月度の1ヶ月間の中で、応募者への原稿募集を行いました。これには各日本語学校で教えている先生たちが、自分たちの学校の生徒たちに声掛けをして行きました。
そして締め切り日までに集まった原稿が78部。その原稿の内容審査を行う会合が4月中旬にあり、私もここに参加しました。78名すべての原稿の一つ一つに全員が点数を付けて評価を下し、その中からさらにまた2次審査用に20数名に絞り込むので、この日は朝8時からみんなが集合して、終わったのは夕方くらいになりました。
しかしこの1次審査では、私から見て(これはすごい日本語の表現能力だな〜)と感心した1人の男子学生がいました。その語彙の豊富さ、漢字表現の上手さ、文法や言い回しの確かさなど、日本人以上に上手な文章を書いている応募者がいるではありませんか。
そのことを昨年の1次審査に出た人に指摘すると、「あまりに上手い表現はどこかからの盗作の可能性も否定出来ないので、次回の2次審査で行うスピーチと質疑応答で、本当に本人に実力があるかどうかが分かります」と言う答えでした。
この2次審査は4月の下旬に行われましたが、残念ながら私は日本に帰国していて参加出来ませんでした。後で聞いたら、この審査には23名のベトナム人が参加して来たそうです。
そしてこの中から最終的に当日の「第13回日本語スピーチコンテスト」に参加する14人が絞り込まれました。この14人の中には、私が感心したあの男子学生の名前は見当たりませんでした。やはり盗作だったんでしょうか。
そして本番の審査となる5月半ばの日曜日。スピーチコンテストの開始は8時45分でしたが、私たち実行委員は7時にベンタイン劇場に集合しました。私は後半の会合には参加出来ませんでしたので、当日は受付・誘導を担当しました。しかしいつものごとく、9時になってもまだ観客席は半分も埋まっていません。ほぼ埋まって来たのは9時半を過ぎた頃くらいからでしょうか。
それでも、昨年よりは集合が早くなって来たようだと実行委員の一人が言っていました。そしてこの日は最終的には約800名の観客が来たということでした。ものすごい数だと思います。そういう意味では、年に一度のこの行事は、ホーチミン市のスピーチコンテストでは一大イベントに成長していっていると思います。
スピーチコンテストの前に披露されたアトラクションでは、日本語を学んでいる中学生や大学生が日本語で歌を唄ったり、踊りを披露したりしてくれましたが、観客が一番喜んだのは柔道の型の紹介や組手でした。
そして肝心のスピーチコンテストもみんな一人一人が堂々と、原稿などは一切読まずに、全員が暗誦していましたね。こういう舞台で発表する時間の5分間というのは、観客には短いようでも、案外本人には長いようですが、そのプレッシャーを感じながらも良く頑張ったと言えるでしょう。
1位の優勝者には日本行きの往復の航空券がプレゼントされました。
この1位の優勝者が日本に行ってベトナムに帰った後は、日本滞在の感想文を書いてくれるそうなので、それも楽しみです。
さて昨年と比較しての「今年と昨年とどちらがレベルが高かったか?」というのは、毎年来ている観客たちもアンケートに率直に答えているんですが、今回も私が感じたのは、発表者の14名中、男子はたった2名しかいないということでした。
昨年も男子学生の発表は少なかったのですが、やはり日本語学習者の比率がベトナムでは女子が圧倒的に多いですので仕方がないのでしょう。それと洋の東西を問わず、男の子はコツコツとした継続的な努力が要求される語学はやはり不得手なのでしょうか。
|