アオザイ通信
【2004年7月号】

ベトナムの現地駐在員による最新情報をお届けします。

春さんのひとりごと

<Tram(チャム)さんの日本留学>

ベトナム人のTramさんは17歳で、今高校2年生です。彼女は9歳から英語を学び始めて、今までずっと続けて来ました。そして今年ベトナムで行われたTOEFLの試験で、見事613点を獲得しました。もちろんこの点数はベトナムの高校生の中では傑出した高得点で、政府 から全国でただ2人だけ金メダルをもらいました。もう1人はハノイの男子生徒だったそうです。

そしてそのご褒美として、日本政府から奨学金をもらって今年から一年間日本のS県に留学することが許可されました。この制度は毎年恒例の行事として実施されているそうで、今年はハノイからその男子高校生が一人と、ホーチミンからは彼女がただ一人の計2名が留学することになったそうです。ベトナムを去って日本に行くのは8月の末です。

しかしご褒美に日本に行けると知っても、日本語など今まで何の勉強もしていないしあまり時間もないので、最初は途方に暮れたそうですが、やはり英語の勉強を通して鍛えた根性が据わっていたのでしょう。5月半ばからベトナム人の日本語学校の先生を毎日自宅に呼んで、ベトナム人の先生と2人だけの、日本語速習の猛特訓が始まりました。

そしてTramさんがひらがな・カタカナ・やさしい漢字と、基礎的な文法を習い終えた一ヶ月後、「日本語の会話の練習と、実際の日本人の発音に慣れるには、日本に行く前の残りの2ヶ月で本当の日本人と会話の練習を積んだほうが良い」という理由から、そのベトナム人の先生から依頼が私にあり、私も「いいですよ」と気軽に引き受けました。

そして6月の初旬にベトナム人の先生から紹介されて初めて会って、彼女のこの1ヶ月間の日本語の上達ぶりには驚きました。ひらがな・カタカナはもちろんすべて覚えていて、漢字も「学校」や「新聞」や「銀行」など頻度の高い2字熟語の100語ほどは、音読み・訓読みも含めてほぼ完全に覚えているではありませんか。これがわずかまだ日本語を習い初めて一ヶ月目とはとうてい信じられません。「やはり語学の才能というのはあるんだなー」と、ひとり感心したことでした。

しかしこの限られた2ヶ月間の中で今Tramさんがやるべきことは、正しい発音を覚え、いろんな文例を頭に叩き込み、豊富な語彙を増やし、会話の練習を何回も繰り返すことを優先にしていくしかなく、今彼女は夏休みということもあり、Tramさん自身が友人との遊びもすべて断り、あまり外にも出ずに自宅で猛勉強している様子が伺えました。

現実は日本に行ってから学ぶ日本語がまた山のように出て来ることでしょうが、頑張り屋の彼女なら習得していくのもさぞ早いことでしょう。事実日本へ留学した後は日本の普通の高校に通い、日本の高校生と同じ教科の授業を日本語で受けることになっているといいますから、不安な気持ちもさぞあるだろうにそれを全然外に出さないその気丈さには感心します。

Tramさんに「将来はどんな仕事をしたいですか?」と、日本語で聞くと少し考えて、「ガイコウです」と日本語で答えました。「外交官」になるのが彼女の夢だそうです。今月7月3日、たまたま日本の川口外務大臣がベトナムに来ていましたが、Tramさんも得意の英語や、もしかしたらその英語以上に得意になるかもしれない日本語で、将来は世界を飛び回っている仕事をしているのかもしれません。





「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。

■ ■ 今月のニュース 「ベトナム全土で140万人が卒業試験を受ける」 ■ ■

ベトナム全土で140万人の学生が2004年度の卒業試験を受けました。この試験は5月25・26日の2日間に渡って行われ、試験科目は国語・物理・数学・外国語の4科目でした。受験生が一番多いのはホーチミン市で、約64,400人。次にハノイ市で39,000人と続きます。
いくつかの地方都市ではこの試験が、高校入試も兼ねた秀才度を察する試験も兼ねています。

ハノイ市では39,000人以上の受験生が91の試験会場、1,628の試験教室で受験しました。例年学校の先生が試験監督もしていますが、今年はその地区の先生が試験でいろんな不正をしないように、昨年監督した地区から今年は別の地区に突然移動させたり、試験が始まるまで先生も入れない、また抜き打ちで試験会場を調査するなどして、注意深く運営にあたりましたので、父兄も安心したようです。試験一日目は、午前に数学(120分)と午後に外国語(60分) が行われました。

ホーチミン市では、64,420人が133の試験会場、2,794の試験教室に分かれて受験しました。特筆すべきはこの受験生の中に、過去に麻薬に手を出して今更正している生徒が85人いたことです。最近の傾向としては、受験生はだんだんと物理や外国語などの難しい教科を敬遠するようにになってきたのですが、全体として当然問題のレベルが上がって来てしまい、難易度が高くなってしまいました。

<2004年度卒業試験の結果>

6月末に今年の卒業試験の結果が新聞紙上で発表されました。それによりますと、全国の平均は91.7%で、省によってはばらつきがありますが、多くの省で98〜99%の学生が卒業資格を得ることが出来ました。地域別に見ますと北部や中部が高い比率(98〜99%)で、最低は中国国鏡近くのHa Giang省(58%)、南部のメコンデルタ地方は80%以下でした。

ホーチミン市は97.57%でした。この中には成績が「優」の生徒が、25.22%、「良」の生徒が32.81%いました。特に今年で注目すべきは、ホーチミン市内の区よりも、郊外のほうが99.60%以上の高い比率で卒業試験の合格者を出したことです。3人の特待生が今年も選ばれましたが、やはりその3人も市内の生徒ではなく郊外の生徒でした。

(解説)
ベトナムでは中学校から高校へ上がる時には、このように卒業試験があります。その試験はすべての生徒が卒業出来るような制度ではなく、成績の悪い生徒は卒業出来ない仕組みになっています。つまり落第です。そのように生徒には大変厳しい試験だけに、生徒や親や何と学校の先生までも巻き込んだ不正が時々行われる場合もあります。それがこの記事の中にある、試験監督に当たる先生の地区ごとの交替という事例です。

さらにこの卒業試験は何と小学校から中学校に上がる時にも行われ、今年はこの試験の結果98%の生徒が卒業したということです。 つまり残りの2%の生徒は小学校を卒業出来なかったということです。


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