春さんのひとりごと
< ベトナムに碁の普及を! >
ベトナムのホーチミン市にある一つの建物の中で、朝からも、昼も、夜も「パチーン・パチーン」と碁を打つ音がしています。たまたま私が覗いたその時には、6人ぐらいの人が碁盤をはさんで対戦していました。そのほとんどがベトナムの人たちです。時に碁の指導のために、日本の人が教えていることもあります。
今から約一年前、日本で会社を持っているAさんが(Aさんご自身も有段者なのですが)、ベトナム人のために碁を普及させようという目的を抱いて、ホーチミン市中心部の一区に碁の教室を開きました。
この碁の教室を開くためにまず一件家を借りて、その家賃代・水道光熱費もすべて自分で払って行くほどの力の入れ方でした。碁を教えると言っても、碁の何たるかも知らないのがほとんどのベトナム人から授業料を取れるはずもなく、最初は無料奉仕と言っていいほどだったようです。ですからすべての経費は身銭を切って今もやりくりされています。
今一年が経ち、ベトナム人でも碁の基本が少しずつ分る人も出て来たのか、Aさん自身もベトナム人と対局していることもあります。ベトナムの人に「碁は面白いですか?」と聞くと「ええー、もう大変面白いですよ。大変奥の深いゲームだと思います」と答えてくれました。将棋は知っていても、碁を知らない私は「そうですか・・・」と聞いているだけですが。
Aさんに「ハノイにも碁の倶楽部はありますか?」と聞くと、「碁をやっ ている人数はホーチミンと同じように少ないが、あることはある」と言う返事でしたが、要はまだベトナムではさほど普及していないという段階なのでしょう。
さらにようやく最近、碁を習っている人たちから正式な受講料代として 、授業料を頂くようにしているということですが、それでもまだまだ電気代にも充当出来ないくらいの額でしょう。それでも「ベトナムの全土に碁 を普及させるんだ!」と熱い情熱を抱いているAさんの言葉には、聞いていて圧倒されます。年齢を聞けば、私よりも10歳上の60歳を少し超えたくらいということですが。
以前合気道を習っているベトナム人の練習の熱心さを見ていて感動しましたが、合気道が「動」の文化と言えるなら、この碁は「静」の文化と言えるでしょうか。
でもこの2つとも今、日本人を経由してベトナムに着実に広がって来ているのが、ベトナムに住んでいる日本人としては大変面白く・嬉しく思えるのでした。
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