「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。
■ 今月のニュース 「来年から学費の大幅値上げ」■
教育養成省の発表によると、来年のU学期(1月から5月まで)から学費の大幅値上げについて提案・発表をした。これに対してそのあまりの学費の値上げ幅の高さに、保護者や生徒たちの間から大きな動揺が起きている。
今回の提案によると、中学校の学費が現行の一ヶ月35,000ドン(約250円)から105,000ドン(760円)に、専門学校の学費が同じように一ヶ月100,000ドン(約720円)から500,000ドン(約3,600円)に引き上げられることになる。
そして今回の発表の最大の問題点は、大学の学費である。この発表によると、大学の学費は今までの180,000ドン(約1,300円)から何と900,000ドン(約6,500円)に大幅に上げられることになっているのである。
全体の平均として見ると、来年から5倍の学費アツプになっていることが分り、約500万人以上の中・高校生や大学生に大きい影響が出るものと予想される。
■学費の値上げは学業放棄の危機!■
(一学生の投書より)
私の大学では100人のうち40人は、今の学費でもその家族の経済状態は大変厳しい・苦しい生活をしている状況です。両親から仕送りしてもらっている金額は、学費と生活費を合わせても平均して300,000ドン〜400,000ドン(約2,200円〜2,900円)が普通です。
田舎から出て来た両親の職業といえば、そのほとんどが農業や漁業です。両親が農業の場合、その収入は米やイモや野菜くらいしか収入源がありません。その収入は一年で1,000,000ドンから2,000,000ドン(約7,200円〜14,500)くらいなのです。
来年からこのような学費の大幅な値上げを実施した場合、それでどうしてこれから学業を続けられるのでしょうか?この件に関して、100人以上の大学生がクラスの中で話し合いました。そしてみんながこう叫びました。
「今回の学費値上げの発表は道理に合わない。こんなに高い学費の値上げは、学生の学業の放棄の危機だ!」と。
(解説)
ベトナムを旅している旅行者が路上やレストランで食事をしていると、夜の8時・9時の時間を過ぎてもまだ小学生低学年くらいの子供たちが宝くじや、花や、チュウインガムや、タバコや、雑誌などを売りに来る光景に出会うことが多くあります。
中には小学生どころか、まだ5・6歳の子供もいます。このような子供たちは夜だけでなく、朝からも昼も同じような物を売り歩くために街中を歩き続けています。
ベトナムでは小学校までは義務教育が義務付けられていますが、このような環境に育った子供たちが満足に学校に行けているかは大いに疑問でしょう。ある人から、中国にも同じような子供たちが数多くいると聞いています。
そうなると、社会主義国にしてこういう貧しい子供たちを学校に行かせることが出来ないという冷厳な事実に、戦後の日本が抱いて来た社会主義国に対しての幻想が崩れていくのは当然と言えます。
今の中国も、今のベトナムも社会主義国でありながら貧富の差はますます開いています。そうなると今でさえ学校に通わせずに我が子に夜遅くまで物売りさせている貧しい家庭と、両親がお金持ちで裕福に育った子供との差は歴然と開いていくことでしょう。
ですから政府が今回のような学費の大幅な値上げをすれば、両親がお金持ちか、貧しいかにより、ますます「学校に行ける子供と、行けない子供」がベトナムの社会に出現することになるでしょう。
知り合いの教育省に最近勤めているあるベトナム人に聞くと、「今回の提案にあったようにいきなり来年から5倍はないだろうが、2〜3倍に値上げされるのは間違いないだろう」と話してくれました。
そうなると、貧しい家庭から大学に送り出している家庭ははたして大丈夫なんだろうかと大いに不安に思います。
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