春さんのひとりごと
<テトが終れば・・・ゴミの山>
今年もまたベトナムのテトが終わりました。今年はベトナムでは1月29日がテトにあたりました。このテトが始る一週間前くらいから、ホーチミン市の街中では到るところでイルミネーションや花や植木で飾り付けが始りました。
ホーチミン市内にある公園では、恒例の花市や盆栽市も開かれました。この花市には私も毎年見物に行きます。様々な色の花で公園全体が埋め尽くされて、それはそれは見事な美しさです。そしてみんなはこの花市で、このテトで我が家に飾るための花や植木や盆栽を買い求めるのです。
昨年からは市内のメイン・ストリートを歩行者天国にして、石や砂を外から持ち込んで大々的に庭を作り、花を植えたりして本当に奇麗なものでした。このテトの時にベトナムを訪問してここを訪れた外国人観光客たちにとっては、格好の観光地点になっていました。
花市でみんなが買うのを見ていると、黄色い菊の花や、黄色い花びらを付けるアンズの木や、黄色い実がいっぱい付いたキンカンの木が多いですね。中国でもベトナムでも、新春を迎える花は黄色い色を好むようです。ベトナム北部では赤い梅の花も好まれます。それを大きい枝ごとばっさり切って花瓶に活けます。
そして買い求めた花や植木を、家の前やお客が来る部屋の中に置き、静かな家はそれなりに静かに、また騒々しい家はカラオケなどをガンガン鳴らしながら、それなりに騒々しく新年を家族みんなで祝うのです。
さてテト一日目も終り1月30日くらいになりますと、もう気の早い家は菊の花などをサッサと棄てにかかります。テトが終り三日目くらいになりますと、テト前に買った花や植木は家の前や中から消えてしまいます。
中にはそのままずっと家に置いて育てる盆栽もありますが、ほとんどはテトの時だけに飾るための花や木でしかありません。それら大量の花や木がゴミとして各家庭から道路にそのまま棄てられますので、道路はもの凄いゴミの山になるのは必然の結果です。
テト終了後はおそらくベトナム全土でこのような状況になっていて、多量のゴミが棄てられていることになるのでしょう。このテトの時期に限らず、ベトナムでは普段でも毎日大量のゴミが、市内では道路でも公園でも食堂の中でもポンポン棄てられていますが、テトの時期にはその量が倍加します。このようなゴミは最後にはどこへ消えていくのだろうかと、これらのゴミの山を見るとふっと思います。
以前ベトナムに来た日本からの大学生が「ベトナムの大学生たちと環境問題について話し合いたいのですが・・・」という申し出がありました。その時に私はこう答えました。「今のベトナムの若い世代でも環境問題や環境意識についてはゼロですから、相手にそういう話を持ちかけても向うは目を白黒するだけしょうね」と答えたことがあります。私のその答えに対して、その時は日本の大学生たちが目を白黒していました。
現在の段階でも、ベトナムではすべてのゴミは分別せずにそのまま埋め立て地に棄てます。道路のゴミを集めて大きい清掃車にゴミを投げ入れるか、または小さい道路だと清掃員の人が押す台車にとにかく何でも上から詰め込んで、清掃車にゴミを積み代えて、それをゴミ捨て場に持ち込んで、そのまま埋め立てて終わりです。
ただ全くリサイクルのシステムがないかというと、みんなが棄てたゴミの中から使えそうな瓶類や紙やビニールや鉄クズなどを、ゴミ回収の人が来る前にそれらを拾い出して持ち帰って行きますので、それらがまたいろんな物に再生されていることでしょう。
そういう仕事をしている人たちに、「一日いくらくらいになりますか?」と聞いたことがありました。すると返って来た答えは、「一日約100円から200円くらいにはなる」ということでした。
今ベトナムに限らず、世界各地で環境汚染は空気や水や食品などにおいて、市民生活を脅かすレベルまで来ているようです。中国から来る知人に聞きますと、経済発展著しい中国も現在やはり川の汚染は深刻なものになっているということですが、ホーチミン市内を流れる川やクリークもすでに真っ黒で、到底魚や藻などの生物が住める状態ではありません。バイクでその川の側を通過するだけで、川から発する悪臭が体に吸い付くような感じです。
今経済発展に邁進している国は、かっての日本がそうであったように物の豊かさと引き代えに、環境破壊・環境汚染も同じように後を追って行くことになるんでしょうか。ちょっと一歩立ち止まるということはやはり難しいことなのでしょう。
せめて「ゴミの少ないベトナムのテトであってくれたら・・・」と、最近テトが来るたびに思うことでした。
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