「BAO(バオ)」というのはベトナム語で「新聞」という意味です。
「BAO読んだ?」とみんなが学校で話してくれるのが、ベトナムにいる私が一番嬉しいことです。
■ 今月のニュース <日本の一主婦の、環境保護の経験を学ぼう> ■
ヘンミ キクコさんは日本人で、英語の翻訳の仕事をしている。桜の国・日本に住む彼女は、一主婦の立場で実践している環境保護活動について、その体験を分かち合いたいという思いから、ベトナムの新聞社に以下のような内容を寄せてくれた。
私たちは、今自分たちが住んでいる地球上の環境が、昨日よりも明日にはさらに良くなるように、出来るだけ改善していかなければならない責任があると思うのです。”
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◎小学校から環境教育◎
私は、日本の西のほうにある滋賀県に住んでいます。滋賀県には、県の面積の6分の1の面積を占める大きな琵琶湖があります。それで滋賀県の住民は、他の県の人たち以上に、自分たちの飲み水の水源には大変敏感です。
小学生の時には、学校の授業活動の一つとして浄水場の見学があります。そしてそこからの水が、自分たちの家の近くまでどう流れて来ているのかを生徒たちが勉強しているのです。
そして水源の水の質と、生活廃水の流れている家の近くの水質は、その環境の影響次第でいかに違うかも学んでいます。
東京においては、「無駄なエネルギーの使用を止めよう!」という看板が目に付きます。公共のバスなどでは、路上で長時間停車する場合は、自動的にエンジンが切れて、排気ガスを出さないように改良してあります。車のエンジンから出る排気ガスは、大気の汚染を引き起こすことは、みんなにも周知の事実なのです。
さらにまたこのことは、ガソリンの節約にもつながることになるのです。私自身も交通渋滞の時には、ふだんからそのようにしています。そのことは環境資源の節約にもつながるからです。
◎食用油の処理の仕方◎
日本人はてんぷらやトンカツなどの揚げ物料理が大好きです。その時に使った油はまた使いますが、それをしまう時には日光をさえぎる容器に入れておくようにします。
何故なら、日光が当たると油は変質して劣化するからです。そして何回か使用して、茶色に変色した頃にその油を棄てますが、その時にも台所の流しに直接棄てたりはしません。
ではみなさんは、私がどうして棄てているのかお分かりになりますか。私は棄てるべき油を一旦紙で出来た牛乳パックに入れて、台所の片隅に置いておきます。
家の中には古いシャツや、破れたシーツやベッドカバーなどがあり、それにこの古い油を少しづつ染み込ませて、直接台所の流しには棄てないようにしています。
また油で汚れた茶碗や皿などの食器も、まず最初にこうした布で拭き取ってから、その後で洗剤で洗うようにして、下水道に流れる洗剤の消費量を減らす努力をしています。浄水場から流れて来た水は各家庭まで引かれていますが、各家庭で使った後の水は、また私たちの水源である琵琶湖に流れていくからです。
◎分別ゴミの出し方◎
分別ゴミの出し方についてお話ししますと、日々家庭から出るゴミはその種類もますます多くなり、その分別方法も大変複雑になって来ているので、私には覚えきれません。それで毎日出るゴミの種類がいつ出せばいいのかが分かるように、冷蔵庫のドアに貼り付けています。
今私が住んでいる町は、9種類の分別の仕方でゴミを出すようになっています。その中の6種類は「資源ゴミ」と呼ばれる種類に入り、飲料用のビンや、ペットボトルや、アルミ製品や、鉄類などがそれに当たります。
家具や掃除機などの粗大ゴミもまたゴミとして出されますが、ゴミの種類によってその回収は一ヶ月に2回だったり、1回だったりします。またスーパーで買った時に食品を包んである発泡スチロールなどは、家庭のゴミとしては出さずに、またそのスーパーに持って行き、専用の箱に入れます。そのゴミはまた再生されます。
今各家庭から出るゴミの多くが、また再生出来る資源として活用されて成功しています。私自身も家庭で使うトイレットペーパーは、再生紙で出来たものしか買いません。
その紙の質は確かに柔らかくはありませんが、再生紙でないものと比べて長さが3倍は違います。古新聞などは廃品回収業者に引き取ってもらい、それを売った代金は学校に寄付させてもらっています。
◎3つのR◎
環境保護に関しては、良く言われている“3つのR ”が大切なことだと思います。Reduce(ゴミの減量)、Reuse(再使用)、Recycle(リサイクル)の3Rです。Reduceに関して例を挙げると、部屋を出る時には電気をこまめに消し、長時間使わない場合は、電源を根元から抜いておきます。
ReuseとRecycleでは、紙の使用が一番改善が出来る点だと思います。一度使用した紙でも、何も書いていない白紙の面は、子どもたちの勉強時に計算用紙などになります。またいろんな目的に応じて再使用が出来ます。
今日本では「もったいないの精神」がみんなに良く知られて来ました。モノが古くなったからといってもすぐ捨てずに、モノを大切に、出来るだけ長く扱いましょうという考え方です。
時には環境に優しい生活の仕方というのは、不便なこともままあります。でもみんながもっとより良いやり方や、効果的な方法を実現出来れば、その困難さは克服出来るでしょう。
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(解説)
この記事の中にある、「小学生の時から授業活動の一つとして浄水場の見学」というのは大変良い課外活動ですね。
この記事が出た時に、たまたまあの村山日本語学校のLuan先生に会うことがあり、この記事が載った新聞を見せて「今のベトナムでは、先生のご存知の範囲内で、小・中学生がこういう活動をしていることを聞かれたことがありますか。」と、私が質問しました。
Luan先生の答えは、「いやー、ベトナムでそういう活動をしている学校は聞いたことがないですね。」という答えでした。私が、「先生はベトナムの教育界にも顔が広いので、この記事をヒントにベトナムの生徒たちにも主要教科の勉強ばかりで終わるのではなく、こういう活動を採り入れるように提案したらどうですか。」と話しますと、Luan先生はただ笑っておられました。
実は村山日本語学校のそばには、サイゴンに観光で訪れた人なら誰しもが訪問する、「戦争証跡館」があります。ここには夏休みなどになると、ベトナムの遠い田舎からも、大型バスを何台も仕立てて、 小学生や中学生が先生に引率されてやって来ます。そしてベトナム戦争についての説明を、熱心に聴き入っています。
過去の歴史を学ぶそういう教育もまた大切なことなのですが、ベトナムのこれからの将来に向けての視点から、未来のベトナムを背負う小学生や中学生や高校生たちに、環境教育の大切さを教えるという観点から言えば、バスの行き先を時には少し変えて見ることも必要なのかもしれません。
そしてさらにLuan先生に、「ハノイでは分別ゴミの出し方が採り入れられたと聞きましたが、サイゴンではまだなのはどうしてですか。」と聞きますと、「いくら住民が家庭から出すゴミを分別しても、ゴミ収集車が集めた後に、その分別ゴミを処理するシステムがないので、結局はまた一緒にしてしまうことになるでしょう。今の段階では無駄というべきです。」という答えでした。
確かにこの記事を読みましても、分別ゴミを何種類にも仕分けしてそれを徹底するというのは、面倒臭いし、手間暇が大変ですね。このやり方を継続して実行するには、住民の人たちのマナー遵守も求められます。
今のサイゴンで果たして分別ゴミの出し方がすぐ出来るかどうかは、大いに疑問符が付くところですが、最近は私もハノイに行かないので、ハノイの人たちのこの点についての今の現状をぜひ知りたいものです。
実は分別ゴミについては私も研修生たちに、「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「空き缶・瓶類」の3種類に分けてゴミの捨て方を実演してみせて、二週間ほどもう一人の日本人の先生と徹底して指導したことがありました。そしてしばらくは、完璧とは言えないまでも、まあまあのレベルまで来ていました。
しかし私とその先生が日本に一時帰って、またベトナムに帰った時には、何もかも一緒にして捨てている、元のやり方に戻ってしまっていました。
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